大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和49年(ワ)2222号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

原告は被告と本件匿名組合契約を締結したが被告が二〇有余年の間、右契約に定めた営業をせず原告に対してその営業状態並びに決算の報告をしないので、商法五三九条二項の規定により、己むことを得ざる事由があるものとして、本件匿名組合契約を解除する旨意思表示したうえ「商法五四一条は、匿名組合契約終了の効果として、営業者は匿名組合員にその出資の価格のみを返還することを要する旨規定しているが、右のように営業者が営業していないことを理由に右の商法五三九条二項によつて解除する場合には商法五四一条の規定の適用はなく、この場合は民法の一般原則に従い、民法五四五条の適用を受けて、営業者は匿名組合契約によつて自己に帰属した財産のすべてをその原状回復義務の履行として返還すべきことになる。」と主張した。

【判旨】

匿名組合契約は、当事者の一方営業者から利益の分配を受けるのを対価として、他方の匿名組合員が営業者のために金銭その他の財産を出資することを内容とし、かつ、その出資は営業者の財産に帰属するのを本質とするものであるから(商法五三五条、五三六条一項)、その契約の解除による終了(同法五三九条一、二項)、その他法定事由による終了(同法五四〇条)の場合、右出資によつて営業者に帰属した財産は、その使用権のみを出資した場合は別として、特約のない限り、匿名組合員に復帰せず、営業者は右契約終了の効果として、右出資の価額(出資が損失によつて減少したときはその価額の残額)のみを返還すれば足りるのである(同法五四一条)。

本件匿名組合契約において、匿名組合員たる原告恭治は、本件土地の所有者であつた原告敏子の承諾のもとに右所有権を営業者たる被告に出資したものであることは前示争いない事実によつて明白であるから、原告らが解除原因として主張する商法五三九条二項の規定による原告恭治の解除によつても、右出資によつて被告に帰属した本件土地の所有権が前所有者原告敏子に復帰する理由はなく、原告恭治が同法五四一条の規定による価額の返還請求権を取得するにすぎない。この点について、原告らは、営業者が長年の間営業していないこと等を理由として商法五三九条二項により契約を解除する場合は右の商法五四一条の適用はなく、民法五四五条の適用を受けて出資した財産自体か前所有者に復帰する旨主張するか、前示匿名組合契約の性質とその解除その他契約終了に関する特別法たる商法の諸規定にかんがみ、右主張のごとき解釈は採用することができない。

してみると、右の原状回復の主張を前提として、原告敏子が本件土地の所有権に基づき、原告恭治が右原状回復義務の履行として、被告に対しそれぞれ本件土地に対する所有権移転登記の抹消登記手続とその引渡を求める本訴各請求は、その主張自体において失当として棄却を免れない。

(深田源次)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!